岐阜の矯正歯科@田中矯正歯科医院
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カッコイイ大人のための矯正講座 その2

抜歯してでもする矯正治療

 

非抜歯に騙されるな~その1~


現在、日本を含めて世界各国で多くの事件が多発しています。歯科界でも政治的な事件が発覚して報道されました。世界情勢だけでなく、矯正歯科界にとってもカオスの時代なのかもしれません。

ここのところ、矯正歯科界では“抜歯” vs “非抜歯”が問題になっています。矯正歯科の歴史において、この論争はこれまでも何度かありました。

19 世紀の末から20世紀の初めにかけて、近代矯正学の父とも呼ばれているDr. AngleとDr. Caseの論争がありました。当時は、非抜歯を唱えるAngle派が主流でした。しかし、1923年頃から、Dr. Lundstromが「顎骨が小さい時には、抜歯をしなければ矯正治療によりつくられた噛み合わせは安定せず、後戻りは避けられない」と主張し、 Angle派の非抜歯論者も非抜歯による矯正治療に疑問を抱くようになります。Angleの弟子のDr. Tweedもその一人でした。

彼は1944~5年頃発表した論文の中で、矯正治療において抜歯の必要性を「非抜歯の治療をした患者様の中で成功は2割、失敗は8割以上であった」と述べています。

矯正歯科の教科書では、便宜(都合がよい)抜歯から、必要(どうしてもいる)抜歯という表現が用いられているように、矯正治療として抜歯が認められています。また、歯科医師国家試験の問題でも抜歯基準についての出題があり、矯正治療の抜歯の必要性は歯科医師の一般知識です。

歯科矯正治療のすべてに抜歯が必要な訳ではありませんが、 最近「非抜歯」を売り物にした風潮が多く、一般大衆ならびに一般歯科医師を困惑させています。そして一番被害を受けるのは患者様です。

そこで被害を少なくする為にも、今回から矯正治療に抜歯が必要であることをシリーズにして理論的にお話しさせていただきたいと思います。

 

非抜歯に騙されるな~その1~デコボコの解消


当医院に来院される患者様の多くは図1のように叢生(そうせい=デコボコ)の患者様です。叢生の原因は、歯の大きさと顎の大きさの不調和です。つまり、4人掛けの椅子に5人も6人も座っているような状態です。

解決するには、椅子を大きくする(顎を広げる)か、座っている人を減らす(抜歯をして歯の本数を減らす)か、どちらかになります。成長発育期のお子様の顎を広げることは可能なため、早くから矯正治療を開始すれば、非抜歯で治療ができる可能性は高くなります。しかし、成人の方は成長発育が残っていませんので、抜歯しなければならない確率が高くなります。

もし成人の叢生を強引に非抜歯で治療すると、口元がでて口が閉じづらくなったり、歯槽骨から歯根が出てしまう危険性もあります。その結果、歯周病になりやすい環境を作ることになります。


治療前

図1:叢生(デコボコ)の治療前


症例集

治療前

図2:図1の治療後



 

抜歯する理由~その1~顔貌<口元>の改善


日本人の理想的な顔貌<口元>は(1)E-line(鼻尖とオトガイ<下顎の一番出ているところ>を結ぶライン)の中に上下の唇が入っていること(図2右)。(2)口の周りに(シワ)がないこと(図2左)。(3)楽に唇を閉じることができること(図2)。

カッコイイ大人の共通事項として、上記の項目が含まれています。目が大きい、小さい、二重、一重、鼻が高い、低いなどは個性に入ります。個性は機能的に問題ありません。

し かし、(1)口を閉じづらい。→(2)歯肉が出て、歯肉が乾燥しやすくなる。→(3)歯肉の抵抗力が弱くなり、歯周病にかかりやすくなる。→(4)歯周病 になると、口臭や歯を支える骨がなくなってくる。→(5)歯を支える骨がなくなってくると、益々、前歯が出てくる。→(6)前歯が出てくると益々口が閉じ づらくなる。→(1)への繰り返しという悪循環は個性とは言えません。理想的な歯並びは機能美と言えるでしょう。


治療前

図1:デコボコの治療前


症例集

治療前

図2:図1の治療後


 

抜歯する理由~その2~正中の改善

 

図1:正中が一致していない 症例の治療前

理想的な歯並びの条件の一つとして、「顔の正中と上下の歯の正中の一致」が条件とされています。矯正治療を受けたトム・クルーズも治療前は、顔の正中と上顎の正中が一致していませんでした。

 

改善の為には、主に①小臼歯(歯の正中から数えて4、5番目の歯)の抜歯、②親知らずの抜歯、のいずれかが必要です。つまり治療には歯を動かすスペースが必要です。スペースが無ければ正中の改善は不可能です。


また、上記の方法以外に、他の部位(虫歯がある歯、根の治療が芳しくない歯、奇形の歯など)を抜歯する場合もあります。

図2:図1の治療後

図2:図1の治療後

①の長所は治療期間が短いことです。短所は健康な歯を抜歯する可能性があることです。②の長所は健康な歯を抜歯する可能性が少ない。短所は治療期間が長いことです。矯正治療の中には上下の歯にゴムを装着して、臼歯を後ろに傾斜させる方法で比較的治療を早く終える方法もありますが、機能的な噛み合わせを作りづらく、顎関節に負担がかかりやすい。また後戻りしやすいなどの欠点もあります。


 

抜歯する理由~その3~開咬の改善(前編)


図1:理想的な歯並び

理想的な歯並びの条件として、「上の前歯が下の前歯を3~4mm覆う。」という事も条件の一つとして上げられます(図1)。前歯で物を噛み切る事ができるからです。しかし、患者様の中には、前歯が咬んでいない人(開咬オープンバイト)もみえます(図2)。開咬は舌を前に出す癖(舌前突癖)上手に飲み込めない癖(異常嚥下癖)アデノイド顎関節の吸収(顎の関節が磨り減ってくる事)などが原因と考えられます。

 
 

 

図2:開咬=オープンバイト

治療としては、口腔周囲筋(舌、唇、頬などの口の周りの筋肉)のトレーニングや矯正治療により改善していきます。矯正治療として、顎間ゴム(上下の歯に装 着するゴム)を使い、上下の歯を挺出(歯槽骨から歯を引っ張りだす事)する事があります(図3)。しかし、短所としては、「歯肉が見えやすくなる」、「顎関節症になりやすい」、「後戻りしやすい」事もあります。従いまして、歯肉が見えやすい人、顎関節が脆弱な人には禁忌となります。

 

 

図3:顎間ゴム

 

 

次回は上記の治療法が顎関節に与える影響について、説明する予定です。



 
 

抜歯する理由~その2~正中の改善


図1:正中が一致していない 症例の治療前

理想的な歯並びの条件の一つとして、「顔の正中と上下の歯の正中の一致」が条件とされています。矯正治療を受けたトム・クルーズも治療前は、顔の正中と上顎の正中が一致していませんでした。

 

改善の為には、主に①小臼歯(歯の正中から数えて4、5番目の歯)の抜歯、②親知らずの抜歯、のいずれかが必要です。つまり治療には歯を動かすスペースが必要です。スペースが無ければ正中の改善は不可能です。


また、上記の方法以外に、他の部位(虫歯がある歯、根の治療が芳しくない歯、奇形の歯など)を抜歯する場合もあります。

図2:図1の治療後

図2:図1の治療後

①の長所は治療期間が短いことです。短所は健康な歯を抜歯する可能性があることです。②の長所は健康な歯を抜歯する可能性が少ない。短所は治療期間が長いことです。矯正治療の中には上下の歯にゴムを装着して、臼歯を後ろに傾斜させる方法で比較的治療を早く終える方法もありますが、機能的な噛み合わせを作りづらく、顎関節に負担がかかりやすい。また後戻りしやすいなどの欠点もあります。


 

抜歯する理由~その3~開咬の改善(中編)


図1:開咬の方は奥歯しか咬んでいない

前回、前歯が咬んでいない人(開咬オープンバイト)に対して、顎間ゴム(上下の歯に装着するゴム)で、上下の歯を挺出(歯槽骨から歯を引っ張りだす事)する治療例を説明しました。開咬は 奥歯しか咬んでいない状況です。前歯辺りに上下の顎間ゴムを装着する(図1)と、奥歯が支点となります。

 


 

 

図2:下顎頭が関節窩から引っ張られている

そして顎関節の部分で、下顎の関節である下顎頭 が、側頭骨の凹んだ関節となるところの関節窩から引きずり出される現象が起きます(図2)。その結果、関節部分にある靭帯や筋肉に緊張が加わり、耳の穴の 前辺りの顎関節部に、痛みを感じることがあります。また、顎間ゴムを装着しなくても、開咬の方は口を閉じる筋肉である閉口筋の力により、顎関節部に下方への応力が加わり、顎関節症が起こりやすくなってしまいます。それを防ぐ為には、できるだけ多くの歯が接触できる噛み合わせを作ることが大切です。

 

図3:顎間ゴム

 

矯正治療において顎間ゴムを使用するのが一般的ですが、上記の理由により、私はできる限り長期間顎間ゴムを使用しない治療を行っています。


 

 

抜歯する理由~その3~開咬および口元の改善(後編)


図3:治療前と治療後の比較

口元が出ていて(図1)、前歯が咬んでいない人(開咬=オープンバイト図2)の場合、歯を抜いて前歯を舌側(中側)に入れると噛み合わせが良くなります。 これは、歯を舌側に引っ張ることで、歯の根の先1/3を中心に回転移動させるためです。そうすると歯が見えている部分「上下前歯の歯冠」の先が、それぞれ 歯が咬む方向に移動「挺出」し、開咬および口元が改善されます。(図4・5)



20数年前、私が大学で授業を受けていた頃は、「歯科医師は、一口腔一単位、つまり一本の歯のみを治療するのではなく、口の中全体を一つの単位と して診て 治療をすべきである」と教育されました。しかし、現在の矯正歯科の分野では「一下顔面一単位で治療」する時代です。顎の関節を含む、「顔の下半分の審美 性、機能、歯ならび、噛み合わせ」を考慮した治療が求められています。




図1:治療前の口元                                                                   図4:図1の治療後
     



図2:同患者様の歯ならび                                                        図5:図2の治療後
       

 

抜歯する理由~完結編~


図1:歯と顎の大きさの不調和

歯と顎の大きさに不調和(ディスクレパンシー)がある場合(図1)、それを解決するには、①歯のアーチを前に広げる(図1の)、②後ろに広げる(図1の)、③横に広げる(図1の←→)、④第一小臼歯(糸切り歯の後ろの歯)を抜くという、4つの方があります。①~③の方法は、いわゆる『非抜歯』で治療をするという矯正歯科医師が選択している手法です。しかし、実際には第一小臼歯は抜かずに、「親知らず」やその前の「第二大臼歯」を抜歯していることがあります。




 





 

        
図2:                                 図3:
口元が引っ込みすぎて              図1の人の横顔の
いる人のシュリエット                       シュリエット

 

矯正治療は決して安い治療ではありませんし、治療に時間もかかります。矯正治療を開始する前に、セカンド・オピニオン、サード・オピニオン(二人目、三人目の先生の意見)をよく聞いてから、ご自分が納得し、ご自分の価値観に合う先生の治療を受けることをお勧めいたします。

①の方法は、歯のアーチを前に広げるため、口元が前に出てしまいます。口元が引っ込んでいて、寂しいような印象を与える方(図2)には有効な方法かもしれませんが、図3のような口元が出ているシュリエットの方に非抜歯で治療すると、益々口元が出て口が閉じづらくなり、将来的に歯周病になる恐れがあります。それを回避するには④の方法が一般的です。

抜歯する理由の一部は過去の記事に連載いたしましたので、ご興味のある方は、お問い合わせください。