岐阜の矯正歯科@田中矯正歯科医院
HOME>院内新聞

| e-歯並びゼミナール |

どのような歯並びに対して、いつから予防・矯正治療をスタートしたらいいのか?

1.乳歯列完成前(0~3歳)


乳歯は上下左右4カ所で5本ずつ、合計で20本生えます。最初は前歯から生え、一時的に受け口になることがあります。なぜなら、奥歯(乳臼歯)が生 えていないため、どこで咬んで良いか分からないからです。このような場合は、自然放置していただいても構いません。生え始めの時期は、歯並びに対して神経 質になるより、虫歯にならないよう注意した方が良いでしょう。

できるなら、正しい咀嚼(良く噛み砕くこと)、嚥下(飲み込むこと)を習得し、習慣づけることが重要かと思います。

2.乳歯列完成(3歳頃)

乳歯列完成時に受け口だと上顎の成長抑制をしてしまうため、夜だけでも上顎骨の成長発育を妨げない装置「ムーアプライアンス(図2)」を装着するのが望ましいでしょう。

この時期、その他の歯並びに関しては緊急に治療する必要がないと思われます。しかし、将来的に叢生(乱杭歯)が予想され、装置の装着が可能なお子さんなら、積極的に上顎を広げる装置を装着すると良いでしょう。



(図1)                                    (図2)                                               (図3)
乳歯の反対咬合                       ムーアプライアンス                    図1の治療後(6ヶ月後)

 

3.乳歯列完成(3歳頃)の噛み合わせ


乳歯は上下左右4カ所で5本ずつ生え、上の歯列(歯並びのアーチ)が下の歯列を覆うのが正常です。また、臼歯部(奥歯)は頬側と舌側に2つの咬頭 (山)があり、その間の溝に上下の咬頭が咬むことになります。下の頬側の咬頭が上の溝に、上の舌側の咬頭が下の溝に咬んでいるのが正常です(図1)。しか し、図2のように片方だけ下の奥歯が上の奥歯よりも外側に生えてきてしまうと、顎が歪んで成長してしまいます。つまり、下の奥歯が外側にある方へ成長して しまいます。

いくら上下の歯並びが良くても噛み合わせが良くなければ、早期の治療が必要になります。治療をする時は、図3の「拡大床」 を装着していただきます。装着時間は基本的に24時間。ただし、食事の時や歯磨きの時には取り外していただきます。もちろん食事制限はありませんし、歯ブ ラシも通常通りに磨いていただければ大丈夫。はじめは違和感がありますが、ほとんどの方が約1週間で慣れるようです。2~3回練習すれば、お子さんご自身 で取り外しすることができるようになります。1週間に1回、中央のネジを回せば、装置が左右に拡大します。



(図1)
乳歯の正常咬合

 


(図2)                                     (図3)
臼歯の反対咬合                          拡大床

 

4.混合歯列期(6~12歳頃)の噛み合わせ


- 反対咬合(受け口) -


通常、乳歯は下の前歯から順に永久歯(大人の歯)へと生え替わっていきます。この時期一番に矯正治療をしなければならない歯並びは「反対咬合(受け口)」です(図1)。なぜなら、生え替わりの時期に反対咬合があると以下のようなデメリットが生じる可能性があるからです。

1.上顎骨の成長抑制をする可能性がある。
2.口を閉じるときに最初に前歯があたる事が多いため、前歯が摩耗(磨り減る)したり、咬合性外傷(噛み合わせが悪く、歯と歯周組織にダメージを与える)を起こす可能性が高い。

そのため、反対咬合の治療は早いほど良いのです。

治療には、舌側弧線装置(図2)を使う事が多数。その理由は、上顎の裏側に装置を装着するため見た目が良く、違和感が少ないためです。さらに、取り外し可能な装置に比べると確実に力が加わり、患者様ご本人の協力性に左右されません。

治療期間は反対咬合の程度によりますが、早ければ1日、平均的には1~2ケ月、長くても半年くらいで噛み合わせの改善ができます。

(図1)                                    (図2)                                       (図3)
      反対咬合                              舌側弧線装置                      図1の治療後(1ヵ月後)

 

 


- 叢生(デコボコ) -


歯の大きさと顎の大きさのバランスが良いときれいな歯並びになります。そのバランスがくずれると叢生(デコボコ)、荒れた叢(くさむら)のようになってしまいます(図1)。

解消するためには、上顎を広げる装置(SPE)を装着します(図2)。上顎は2枚の骨が一対になっていますから、成長発育期のお子さんであれば、上顎を広げることは可能です。また、鼻の穴の骨(梨状口)も広がるので、鼻の通りが良くなったというお子さんも沢山います。

そのため、顎そのものを拡大することは不可能ですが、歯列を横方向に拡大することはある程度可能です。

上顎を広げる治療のペースは1週間で1/4ミリです。ゆっくり広げていきますので痛みはほとんどありません。また、食事、歯磨きの時には、外していただきますので、普段通りに生活していただいて構いません。
 

(図1)                                       (図2)
      反対咬合                                  舌側弧線装置

 

 

 

- 左右非対称 -


頬杖や、姿勢が悪い事により上下の正中(真ん中)がずれる事があります(図 1)。また、噛み合わせが悪い事により、下顎がどちらかにシフトする事があります。前者に対しては、まず、頬杖をしないよう指導したり、腰骨をたて姿勢を 正す事が大切です。一昔前では、しつけの厳しい父親や、おじいさんがよく言っていた事だと思います。長年の言い伝えに間違いはありません。最近では、古き 良き時代の父性の厳しさが無いせいか、姿勢を正さないお子様が大変多く見受けられます。

左右非対称のケースでは、2つに大別するこ とができます。顎変位と顎変形です。前者では下顎の位置を安定させるようなスプリント(図2*図1の患者様とは違う写真です)をおよそ6ケ月装着し、正中 が合えば、噛み合わせを治す事により左右非対称を治す事ができます。後者では下顎の形が変形していますので、矯正治療のみで治す事は困難です。

図1の患者様には、前回の拡大装置とスプリントにより、正中が一致しました(図3)。


 

(図1)                                       (図2)                                       (図3)
      反対咬合                                  舌側弧線装置                              図1の拡大
                                                                                                               下顎の位置の安定後(3年4ケ月後)

 

 

- 上顎前突(出っ歯) -



長年指吸いダコができるほどおしゃぶりを続けたり、鼻で呼吸ができないと上顎前突(出っ歯)になってしまいます(図1)。

指しゃぶりはハビットガードなどの装置を使って、強制的に止めさせることもできますが、お子様にとって精神的な負担になり、ストレスが増加してしまう可能性があるため、お薦めできません。

それよりもお父さん、お母さんができるだけお子様と一緒にいる時間を多くとり、たくさん愛情を感じさせてあげることが大切だと思います。また、お子様が喜ぶような事や熱中できることに時間を費やしてみるのも良いでしょう。そうすることで、指しゃぶりが治ることもあります。

それでも上顎前突になってしまった場合は、上顎を広げる装置(SPE)を装着します(図2)。前回ご紹介した装置との違いは、前歯のところにワイヤーがある点です。装置が側方に拡大されることによって、ワイヤーが後方に引っ張られます。その力で前歯を後ろに入れていくという方法になります。

 

(図1)                                       (図2)                                       (図3)
      治療前の上顎前突(出っ歯)          上顎を広げる装置(SPE)         図1の治療後(2年4ケ月後)

 

 

- 叢生(デコボコ) -


叢生(デコボコ)があり(図1)、来院のタイミングが遅く、十二号で紹介させていただきましたSPEを装着する時間がない場合で、成長が残っている場合には急速拡大装置(RPE)を 用います(図2)。成長が残っているかどうかの判断は、手のX線写真(手根骨)で判断致します。思春期成長の最中であれば、装置の効果はかなりあります。 この装置の特徴はかなり違和感がありますが、短期に上顎骨を拡大致しますので、図3のように中切歯(真中の前歯)の間に隙間ができるくらい拡大できます。 その結果鼻の通りも良くなる事が多いです。

真中の隙間は自然放置でも、きれいに隙間が閉じてくるので問題はありません(図4)。

この患者様は、成長発育中に上顎を広げる事ができたため、犬歯が並びきらない程のデコボコがあるにもかかわらず、歯を抜かずに矯正治療を終える事ができました。

 

(図1)                                       (図2)                                       (図3)
     叢生(デコボコ)          急速拡大装置                  図1の治療後(2ケ月後)

 

 

(図4)                                                                 (図5)
     図3の2ケ月後                                     同症例の矯正治療終了後
 

- まとめ -


混合歯列期における矯正治療(第一期治療)の目標は、次の通りです。(ただし、その医院により異なる事もありますので、あくまでも私見です。)

1)、成長発育を阻害するような歯並び・噛み合わせ(例えば、受け口や下の歯が見えないくらい噛み合わせが深い人)に対して、簡単で、患者様の負担の少ない装置(取り外しができるものや、歯の裏側に装着する装置)を用いる事により、上顎および下顎をより良い成長発育に導く事を治療目標とします。また、顎の成長促進および抑制を行う事もあります。

2)、早期治療により、難易度の改善を 行います。すなわち、困難な症例を中等度な症例に、中等度な症例を容易な症例に導きます。その結果、抜歯症例が非抜歯症例になることもあります。また、抜 歯症例になったとしても、難易度は改善されているため、第二期治療(図2・3)の治療期間が短くなり、複雑な装置を使用しなくてもすみます。その結果、患 者様の負担がかなり軽減致します。

3)、第二期治療を行わずに矯正治療を終えることができれば最高の結果となります。


(図1)                                    (図2)                              (図3)
     噛み合わせが深い                      メタルブラケット                セラミックブラケット